信州・長野県の東部に位置する小諸市(こもろし)。浅間山の麓に広がるこの城下町は、古くから「発酵のまち」として知られ、味噌や醤油、そして日本酒造りが盛んに行われてきました。
詩情あふれる高原の城下町で醸される、小諸の日本酒の魅力についてまとめた記事を作成しました。
浅間山の伏流水と歴史が醸す一杯。小諸市の日本酒ガイド
長野県小諸市。島崎藤村の詩にも詠まれた「小諸なる古城のほとり」というフレーズが有名ですが、ここは知る人ぞ知る「美酒の産地」でもあります。
標高が高く冷涼な気候、そして浅間山からもたらされる清冽な水。酒造りに最高の条件が揃ったこの地で、静かに、しかし熱く醸される日本酒の魅力に迫ります。
小諸の酒造りを支える「大塚酒造」
小諸市内の日本酒シーンを語る上で欠かせないのが、江戸時代(天保12年・1841年)創業の老舗、大塚酒造です。現在、小諸市内に残る唯一の造り酒屋として、伝統の味を守り続けています。
代表銘柄:『浅間嶽(あさまだけ)』
地元のシンボルである浅間山の名を冠したこの酒は、小諸のテロワール(風土)そのものと言えます。
- 味わい: キレのある辛口がベースですが、ただ辛いだけではなく、米のふくよかな旨味がしっかりと感じられます。
- こだわり: 全量、長野県産の酒造好適米(美山錦やひとごこちなど)を使用。小規模な酒蔵ならではの、目の行き届いた丁寧な手作業で醸されています。
- 楽しみ方: 冷酒でスッキリと味わうのはもちろん、お燗にすると隠れていた米の甘みが顔を出し、信州の郷土料理との相性が抜群です。
なぜ、小諸の酒は旨いのか?
小諸の日本酒が高く評価される背景には、3つの大きな理由があります。
① 浅間山の伏流水
酒の成分の80%以上は「水」です。小諸は浅間山に降った雨や雪が長い年月をかけて地下でろ過され、湧き出る伏流水に恵まれています。この水は適度なミネラルを含んでおり、酵母の働きを助け、キレの良い後味を生み出します。
② 極寒の気候
小諸の冬は氷点下になることも珍しくありません。この「寒さ」こそが酒造りには重要です。雑菌の繁殖を抑え、低温でじっくりと発酵(長期低温発酵)させることで、きめ細やかで香りの高い酒が生まれます。
③ 地元の酒米
長野県オリジナルの酒米「美山錦(みやまにしき)」や「ひとごこち」の産地である佐久・小諸地域。地元で育った米を、地元の水で醸す。この一貫性が、ブレのない味わいを作ります。
酒蔵を訪れる楽しみ
小諸駅から徒歩圏内にある大塚酒造は、かつての北国街道沿いに位置しています。
大塚酒造株式会社
- 住所: 長野県小諸市大手2-1-24
- アクセス: しなの鉄道・JR小海線「小諸駅」から徒歩約5分
- 特徴: 登録有形文化財に指定されている趣ある店舗兼主屋も見どころの一つです。
蔵の入り口には杉玉が飾られ、歴史を感じさせる佇まいがあります。直売所では、季節限定の「しぼりたて生酒」や、流通量の少ない希少な銘柄に出会えることもあります。
小諸の「食」とのペアリング
小諸の酒を手に入れたら、ぜひ地元の食と合わせてみてください。
- 信州そば: 小諸は「霧下そば」の産地としても有名です。『浅間嶽』のキリッとした飲み口は、そばの繊細な香りを邪魔せず、出汁の旨味を引き立てます。
- 鯉(コイ)料理: この地域で古くから食べられている「鯉のあらい(刺身)」や「鯉こく(味噌汁)」。泥臭さが全くない小諸の鯉と、しっかりとしたボディの日本酒は相性抜群です。
- 野沢菜漬け: シンプルですが、これ以上のつまみはありません。発酵食品同士の相乗効果を楽しめます。
まとめ:小諸で「酔う」という贅沢
ワイン産地としても近年注目を集める小諸市ですが、その土台には、数百年続く日本酒造りの歴史と技術があります。
懐かしい城下町を散策し、浅間山を眺め、夜は地元の居酒屋や宿で『浅間嶽』を傾ける。そんな「歴史と自然に酔いしれる旅」へ、出かけてみてはいかがしょうか。


